うたのみあらか

かみほめ つちほめ たてまつる みそひとつ

うたのみあらか

歌之御舎
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歌 帖 案 内

日本四十七国めぐりの旅
日本四十七国めぐりの旅
全81首。北は北海道から南は九州沖縄まで、都道府県ごとに地の神に奉る。 平成31年(2019年)4月23日公開
山手線の旅
山手線の旅
全33首。品川から大崎、五反田、目黒と外回り各駅停車の旅。渋谷・新宿・池袋の喧騒尻目に田端を過ぎて東京を経て田町を越して、2020年開業予定の新駅を横目に見つつ品川に戻る。 平成31年(2019年)4月16日公開
長崎街道 筑前六宿の旅
長崎街道 筑前六宿の旅
全12首。長崎街道起点の豊前国常盤橋から筑前国の六宿、黒崎、木屋瀬、飯塚、内野、山家、原田を辿る。 平成31年(2019年)4月15日公開
国鉄香月線の旅
国鉄香月線の旅
全6首。明治から昭和を駆けた全4駅 路線距離わずか3.5粁の旧石炭輸送線。 平成30年(2018年)12月12日公開
 
詠歌目録
詠歌目録
これまでに生した歌 853首。 平成31年4月23日現在
 
 

 

日本四十七国めぐりの旅

日本四十七国めぐりの旅
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日本四十七国めぐりの旅 - 起請

 「にほん」とも、または「にっぽん」とも呼び、やや古風には「ひのもと」と呼び、 さらに古めくには「しきしま」「やしま」「あきつしま」「とよあしはらのなかつくに」などとも呼ぶこの国は、 本州、北海道、四国、九州ならびにあまたの離島、諸島、群島からなる島嶼国家である。

 せまいとも言い山がちとも言い、それはその通りなのだろうけど、たづきのない男ひとつにはじゅうぶんもてあます広さがあり、 足を踏み入れたことのない地を挙げれば恥ずかしながら十指では遠く及ばない。

 日ごろから口しげく玉垣の内つ国の子を称しておきながら、大八洲の地神に無沙汰を通すのも心苦しい。
 なので、せめて詠めをもって詣でにかえ、神さまがたの機嫌を伺いたいと思う。

日本の衛星写真
Photo by SeaWiFS Project / PDM
旅の概観
四十七都道府県の位置
Photo by Pekachu / PDM

 平成日本の広域行政区画たる四十七の都道府県をそれぞれ国に見立て、詠め奉っていこう。
 北海道を手始めに海峡を越え本州に上り東北、関東、上信越と歩を継ぎ、最後は九州から沖縄に渡るのだ。
 四十七の国にはそれぞれいくつもの詠めるべき町や里があるのだけれど、誘われるまま立ち寄っていてはいつまでも旅は終わらない。
 口惜しくはあるけれど国ごとにつばらに詠めるのは良き時を待つことにして、一国二首までの限りとしよう。

いざさらば 八洲の神に 誓ひなむ あがたにむすぶ 言つ霊
賜るならば 歌はなれ 叶はぬならば 歌はなるな
                     
一の国 北海道球場と岬

 古くは蝦夷地(えぞち)。樺戸の郡に月形の名を遺す国。

 増毛にかもめと戯れし国。落合に雪を掬いし国。尺別に夕陽映えし国。北浜に海を眺めし国。

札幌ドーム
Photo by Jun Ohwada / CC BY
宗谷岬の落日
Photo by Searobin / CC BY-SA
          
二の国 青森県愛づるりんご 啜るりんご
岩木山
Photo by ak15 / CC BY

 道の奥なる陸奥国(むつのくに)のさらに奥なる陸奥国。竜飛崎に級長戸辺神(しなとべのかみ)吹き荒るる国。

 青森に寿司はみし国。弘前に城めぐりし国。深浦に海を愛でし国。じょんがら染みし国。好みていくどか訪いし国。

りんごジュース
          
三の国 岩手県黒な鉄瓶

 陸奥国(むつのくに)。岩手山おおしき国。八幡平に焼き走りの地獄ひろごる国。

 盛岡に歩きし国。小岩井に遊びし国。花巻に思いがけず祭りを物見せし国。

南部鉄器鉄瓶
Photo by Misakubo / CC BY-SA
          
四の国 宮城県松島と桜

 陸奥国(むつのくに)。鹽竈(しおがま)のみやしろに塩土老翁神(しおつちのおじ)の招く国。

 松島には曇りし国。仙台には宿処を忘れて彷徨いし国。女川にはただ茶を飲みし国。

          
五の国 秋田県秋田美人

 出羽国(でわのくに)。辰子潟の深く透ける国。

 皐月に宿とれず寒き一夜を過ぐしし国。花輪線の車窓に秋津むらかかやきし国。

          
六の国 山形県紅の宝玉と川下るまれびと

 出羽国(でわのくに)。雨さす最上に翁はやる国。月読命(つくよみのみこと)名にし負う山をしらしめす国。

 今泉の跨線橋ゆり朝日連峰にかしこみし国。釜淵に雪の深さ尋ねし国。真室川にかさねて尋ねし国。

最上川の最上峡
          
七の国 福島県夏のくらべ馬
桧原湖畔から桜島磐梯山
Photo by houroumono / CC BY

 陸奥国(むつのくに)。気高く険しく磐梯山そびゆる国。

 飯坂の宿にくつろぎし国。只見線に雪と水を愛でし国。会津若松にちぢれ麺すすりし国。

          
八の国 茨城県春と波

 常陸国 (ひたちのくに)。鹿島のみやしろに武甕槌(たけみかづち)大神まします国。

 下館に青い気動車を眺めし国。友部にサイロを眺めし国。

大洗磯前神社 神磯の鳥居
          
九の国 栃木県小麦の皮と餡

 下野国(しもつけのくに)。二荒山(ふたらさん)に味耜高彦根あじすきたかひこね)命まつる国。

 黒磯にたまゆら暗みし国。小山に汽車を待ちし国。

宇都宮餃子
          
十の国 群馬県蚕と繭玉

 上野国(こうずけのくに)。赤城の山から冴ゆる風ふきおろす国。

 高崎の汽車待ちに凍えし国。横川の汽車待ちに補機を眺めし国。

          
十一の国 埼玉県町と翼

 武蔵国(むさしのくに)。人里おおくして幸いもおおき国。

 武蔵野に宿を借りし国。大宮につばめを狩りし国。寄居に気動車を駆りし国。

          
十二の国 千葉県海を埋めて

 下総国(しもうさのくに)上総国(かずさのくに)安房国(あわのくに)。香取のみやしろに経津主(ふつぬし)大神まします国。

 船橋の馬つ国に焦燥せし国。鴨川の魚つ国に賞賛せし国。浦安の鼠つ国に消耗せし国。

桜の花
          
十三の国 東京都将軍と大君

 武蔵国(むさしのくに)。現つ世の大君まします国。大国魂のみやしろたちます国。

 面影橋に宿りし国。府中に宿りし国。学びを放らしし国。勤めを放らしし国。

六本木ヒルズ大展望台より
          
十四の国 神奈川県童謡と願い

 相模国さがみのくに)。鶴岡に右府殿を偲ぶ国。芦ノ湖にふた文字ゆれる国。

 箱根、横浜、鎌倉、江の島に浅浅と遊びし国。

横浜 夕景
          
十五の国 新潟県坏と月と天の川
姥沢新田
Photo by 古峰 / CC BY-SA

 越後国(えちごのくに)佐渡国(さどのくに)。くがねめく瑞穂に宇迦之御魂(うかのみたま)神やどる国。

 羽越線に海を愛でし国。米坂線に樹々を愛でし国。飯山線に土を愛でし国。只見線に雪を愛でし国。

新潟のお酒
          
十六の国 富山県箱と宮
冬の富山市街地

 越中国(えっちゅうのくに)。立山連峰しららかに空ふさぐ国。

 花のころ宿りし国。花冷えに城を廻りし国。

富山駅 郵便ポスト上
Photo by [cipher] / CC BY-SA
          
十七の国 石川県庭園と犬鷲

 加賀国(かがのくに)能登国(のとのくに)。艶めく白山に菊理媛(くくりひめ)神ほほえむ国。

 七尾湾に沿いてはしりし国。輪島に朝あるきせし国。

日照岳から望む白山
Photo by Alpsdake / CC BY-SA
          
十八の国 福井県太古竜
気比松原と敦賀
Photo by Alpsdake / CC BY-SA

 越前国(えちぜんのくに)若狭国(わかさのくに)。松原に大神の御先のあそぶ国。

 敦賀に赴きてただ戻りし国。

福井駅 恐竜広場
          
十九の国 山梨県いくさと滾ち

 甲斐国(かいのくに)。不死の高嶺に交ひしらふなま黄泉の国。

 夜の大月に揺られし国。笹子の谷に冷えし国。

河口浅間神社 母の白滝
Photo by Saigen Jiro / CC0
          
二十の国 長野県はちす花とアルプス

 信濃国(しなののくに)。諏訪の神の淡海にこもります国。

 松本に山を眺めし国。木曽路に山を眺めし国。伊那路に山を眺めし国。

善光寺放生池
Photo by Hieitiouei / CC BY-SA
松本城
Photo by sota / CC BY-SA
          
二十一の国 岐阜県布武のよすか
郡上八幡城から
Photo by Akiyoshi's Room / PDM

 美濃国(みののくに)飛騨国(ひだのくに)。八幡大神さやかに漬つる国。

 高山に祭りを眺めし国。中津川にしば憩いし国。大垣に足を換えし国。

岐阜城 復興天守
Photo by Alpsdake / CC BY-SA
          
二十二の国 静岡県ゆるびとおそれ
富士山本宮浅間大社 大鳥居
Photo by Ennui / PDM

 遠江国(とおとうみのくに)駿河国(するがのくに)伊豆国(いずのくに)。浅間大神いかめしくもまぐわしき国。

 熱海の浜風に吹かれし国。曳馬の城風に吹かれし国。浜名の湖風に吹かれし国。

富士市今宮の茶畑
Photo by くろふね / CC BY
富士山と狩宿の下馬桜
Photo by のべ吉 / CC BY
          
二十三の国 愛知県鯱と狐

 尾張国(おわりのくに)三河国(みかわのくに)。天叢雲(あめのむらくも)熱田の宮に曇りなくます国。

 名城にのぼりし国。地下街に潜りし国。きしめん啜りし国。

豊川 諏訪の桜トンネル
Photo by Kiyok / CC BY-SA
          
二十四の国 三重県あねさまかかさま
伊勢神宮 内宮 宇治橋の鳥居
Photo by z tanuki / CC BY

 伊賀国(いがのくに)伊勢国(いせのくに)志摩国(しまのくに)。朝明ふるかむかぜの国。常世の浪の頻波よする国。

 かたじけなくもいまだ訪わざる国。

内宮 別宮 伊佐奈弥宮伊佐奈岐宮
Original Photo by N yotarou / CC BY
          
二十五の国 滋賀県首ともみじ
琵琶湖に立つ白髭神社の大鳥居

 近江国(おうみのくに)。近つ淡海に浅井比売のこうべ鎮ます国。ましらの神の鳥居めでたき国。

 米原に雪ながめし国。米原に吹雪かれし国。米原になにごともなかりし国。

          
二十六の国 京都府月読と法師
嵐山 渡月橋
Photo by estel_bb / CC BY

 山城国(やましろのくに)丹波国(たんばのくに)丹後国(たんごのくに)。嵐山に月読(つくよみ)くまなくかかる国。

 金閣寺本願寺梅小路、二条城、嵐山など物見するもふつに遊びたらぬ国。

京都 夜景
          
二十七の国 大阪府にぎにぎしにぎにぎし
道頓堀 えびす橋

 河内国(かわちのくに)和泉国(いずみのくに)摂津国(せっつのくに)。蛭子(ひるこ)大神と八重事代主(やえことしろぬし) あいのえびすに賑わう国。

 千日前に笑いし国。道頓堀に浮かれし国。天保山またぎし国。

大阪 新世界
Photo by DJ Quietstorm / CC BY
堀川戎神社の十日えびす
Photo by Kentaro Ohno / CC BY
          
二十八の国 兵庫県白に染む城 朱に染む酒

 摂津国(せっつのくに)丹波国(たんばのくに)但馬国(たじまのくに)播磨国(はりまのくに)淡路国(あわじのくに)。 御食向かう淡路に八洲の父かくらるる国。

 城崎に柳愛でし国。城崎に湯浴みせし国。城崎にすずろ歩きし国。

姫路城
          
二十九の国 奈良県鹿と鹿
吉野 宮滝 夢のわだ -旅人のために-
Photo by 8-hachiro / CC BY-SA

 大和国(やまとのくに)。磐余彦(いわれひこ)の行き着きし国。小碓(おうす)も旅人(たびと)も恋ほしむ国。

 京都ゆり和歌山の道ゆきにまどろみつつ経し国。とかく恋ほしき国。

          
三十の国 和歌山県赤人の浦と小さ神
友ヶ島の戦争遺産
Original Photo by Hiroaki Kaneko / CC BY-SA

 紀伊国(きいのくに)。五瀬命(いつせのみこと)たけびし国。名にし負う浦に赤人の手を遺す国。

 橋本に息をつきし国。紀の川沿いに鉄路たどりし国。如何にしてまかりしか覚えぬ国。

和歌の浦 明け方
Photo by t.shigesa / CC BY-SA
加太港の朝
          
三十一の国 鳥取県砂のしとね
大山
Photo by kobeoyaji / CC BY

 因幡国(いなばのくに)伯耆国(ほうきのくに)。月にも沖にもうさぎ跳ぬる国。

 ただ上べりを行き過ぎし国。

          
三十二の国 島根県いづもおおやしろ
宍道湖の夕日

 出雲国(いずものくに)石見国(いわみのくに)隠岐国(おきのくに)。大己貴(おおなむち)の宮にもろもろの神ざざめく国。

 縁も知らぬまま大己貴に詣でし国。出雲そばもとめし国。山陰線の客車にひたすら揺られし国。

出雲大社 本殿
Original Photo by oonamochi / CC BY-SA
          
三十三の国 岡山県吉備津の釜
牛窓のオリーブ園から瀬戸内海を臨む
Original Photo by 白石准 / CC BY-SA

 美作国(みまさかのくに)備前国(びぜんのくに)備中国(びっちゅうのくに)。吉備津(きびつ)の釜に温羅(うら)の吠ゆる国。

 うらめしくも尻目に過ぐるばかりの国。

          
三十四の国 広島県比売ともみじ

 備後国(びんごのくに)安芸国(あきのくに)。厳島のもみじ宗像の比売にしたふ国。

 あたらしくも東西に貫けるばかりの国。

厳島神社
Original Photo by scarletgreen / CC BY
落葉
          
三十五の国 山口県幼みかどと水天と踊り

 周防国(すおうのくに)長門国(ながとのくに)。さばの浦に熊鰐(くまわに)さかきをたつる国。

 下関に青電機見初めし国。小郡に黒蒸機見初めし国。

壇の浦古戰場址と関門橋
唐戸市場
          
三十六の国 徳島県うず潮と軍人

 阿波国(あわのくに)。大宜都比売(おおげつひめ)の神からうるわしき国。

 哀れにもいまだ味わい知らぬ国。

          
三十七の国 香川県うどん
談古嶺から屋島古戦場跡を望む

 讃岐国(さぬきのくに)。名を聞けば湯気たちしずく垂る国。

 さ寝なきまま露知らぬままの国。

讃岐うどん
Original Photo by open-arms / CC BY
          
三十八の国 愛媛県みかんと温泉

 伊予国(いよのくに)。道後の湯に少彦名(すこなひこな)の癒ゆる国。

 訪わざることいよ永々めける国。

愛媛のみかん山
Photo by tamaiti / CC BY-SA
松山 放生園 足湯
          
三十九の国 高知県一本釣り

 土佐国(とさのくに)。一宮(いっく)の地に一句の神いつく国。

 音沙汰なきまま膠着したる国。

鰹のタタキ
          
四十の国 福岡県屋台と太兵衛

 筑前国(ちくぜんのくに)筑後国(ちくごのくに)豊前国(ぶぜんのくに)。八幡大神みあれの国。旅人(たびと)憶良(おくら)ら手を遺しし国。

 生りし国。住まう国。なほ訪わざる地おおくある国。

博多中洲屋台
博多駅前 黒田節 母里友信の像
Photo by Wiki591801 / PDM
          
四十一の国 佐賀県気球と媛
虹の松原全景
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 肥前国(ひぜんのくに)。佐用姫(さよひめ)の領巾(ひれ)ふる山かがむ国。

 わづかに訪いし国。のち、わづかに訪いし国。

佐賀インターナショナルバルーンフェスタ
          
四十二の国 長崎県祈りと月読
長崎くんち 籠町 龍踊り
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 肥前国(ひぜんのくに)壱岐国(いきのくに)対馬国(つしまのくに)。建御名方(たけみなかた)神 くんちに目を肥やす国。

 異教のあらか物見せし国。雲仙の地獄物見せし国。ちゃんぽんカステラうまかりし国。

長崎港
Photo by よしむら / CC BY
海と月読
          
四十三の国 熊本県山と城
黒川温泉
Photo by hiroooooki / CC BY

 肥後国(ひごのくに)。阿蘇つ峰の穏しからむこと祈る国。

 堅城に桜を愛でし国。拉麺すすりし国。馬刺しうまかりし国。蒸機にときめきし国。

草千里から見た阿蘇中岳
Photo by Hahifuheho / CC0
熊本城
Photo by 663highland / CC BY
          
四十四の国 大分県湯の里 水の郷

 豊前国(ぶぜんのくに)豊後国(ぶんごのくに)。湯けむりに地獄をもてあそぶ国。

 万年山に血のゆかりしのぶ国。豊後森に火器きず悼む国。かじか鳴く川筋のあらかにくつろぎし国。

別府 鉄輪 坊主地獄 蒸し釜
Photo by As6022014 / PDM
三隈川 鵜飼い
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四十五の国 宮崎県新婚の聖地 神代にも
都井岬の野生馬
Photo by z tanuki / CC BY-SA

 日向国(ひゅうがのくに)。火瓊瓊杵(ほのににぎ)天降りし国。狭野命(さぬのみこと)東に発ちし国。

 往昔の夏に遊びし国。いづこにか宿りし国。思い出おぼろなる国。

青島
Original Photo by trini / CC BY
          
四十六の国 鹿児島県知覧 万世 指宿 鹿屋 串良 国分 出水
桜島
Photo by Junpei Abe / CC BY

 大隅国おおすみのくに)薩摩国(さつまのくに)。隼人の胸肚いぶす桜島の国。

 西鹿児島に降りし国。桜島の地わづかに踏みし国。西鹿児島に乗りし国。再訪のあらまし潰えし国。

第72振武隊 昭和20年5月26日 PDM
          
四十七の国 沖縄県青い海とウチナーいくさ

 琉球国(りゅうきゅうこく)。美ら海にはらからの血をたたえたる国。涙かわきがたき国。なほ地政ゆるばざる国。

 訪いがたき国。

沖縄の海
Photo by Alan Wat / CC BY
          
日本四十七国めぐりの旅 終わり
富士と桜
Photo by TANAKA Juuyoh / CC BY
八洲なる 神の御狩り場 瑞穂なる 君の御食し処 敷島は 四季まさる洲
冬籠り 鮒あぶらづき 春霞み 雲雀さへずり 夏時雨 かじか響もし 秋つ風 蜻蛉よらしむ
傾く陽に 翅はかがよひ 揺るほどに 穂の禾かぎらひ 宇迦のはら いよよかかやき 国のはら ましてかかやく
うつくしや この秋津しま とこしへの まほらなりこそ われらなくとも
秋の稲穂
Photo by kyu3 / CC BY-SA
平成31年(2019年)4月23日
 

滋賀県大津市神領 式内社 建部大社 主祭神 日本武尊 奉の二 船幸祭

滋賀県大津市神領 建部大社 船幸祭

 日本武尊に奉る

夜さりに凛と花さく上古なる船は帰すらむ瀬田の唐はし
853. ようさりに りんとはなさく じょうこなる ふねはきすらむ せたのからはし
よう さりに
りん とはなさく
  ょうこなる
   ふねはきすらむ
   せたのからはし
「じんりよう」
#履歴
20190421 初
夜さりに凛と花さく上古なる船は帰すらむ瀬田の唐はし
 

奈良県御所市原谷 国見神社 主祭神 瓊瓊杵尊

奈良県御所市原谷 国見神社 国見山

 神日本磐余彦尊を斎ひ 瓊瓊杵尊に奉る

暮れかかりにぎし秋津らみおやにもしみつ吾れにもしみつあなにや
852. くれかかり にぎしあきつら みおやにも しみつわれにも しみつあなにや
 れかかり
 ぎしあきつら
 おやにも
  しみつわれにも
  しみつあなにや
「くにみ」
#履歴
20190421 初
暮れかかりにぎし秋津らみおやにもしみつ吾れにもしみつあなにや
 

島根県安来市能義町 能義神社 主祭神 天穂日命 奉の二

島根県安来市能義町 能義神社

 天穂日命に奉る

野らうつは君とみこととやすらへる生業のつちみどりあざあざ
851. のらうつは きみとみことと やすらへる すぎはひのつち みどりあざあざ
  らうつは
  みとみことと
  すらへる
すぎ はひのつち
   みどりあざあざ
「のき」「やすぎ」
#履歴
20190419 初
野らうつは君とみこととやすらへる生業のつちみどりあざあざ
 

島根県安来市能義町 能義神社 主祭神 天穂日命 奉の一

島根県安来市能義町 能義神社

 天穂日命に奉る

告らすまま来たちめすくにやはらげて澄める君はや吟じまつらな
850. のらすまま きたちめすくに やはらげて すめるきみはや ぎんじまつらな
 らすまま
 たちめすくに
 はらげて
 めるきみはや
 んじまつらな
「のき」「やすぎ」
#履歴
20190419 初
告らすまま来たちめすくにやはらげて澄める君はや吟じまつらな
 

令和改元奉祝 天平二年正月十三日 大宰帥宅 梅花宴

令和改元奉祝 天平二年正月十三日 大宰帥宅 梅花宴

 兄大伴旅人に奉る

人はみな花と生りにき さればおのおのにほふどち 杯なとどめそ
849. ひとはみな はなとなりにき さればおの おのにほふどち つきなとどめそ
ひとはみ    
はなとなりに  
されば    おの
おのにほふど  
つきなとどめ  
「そちのおきな」
#履歴
20190419 初
人はみな花と生りにき さればおのおのにほふどち 杯なとどめそ
 

山手線の旅

山手線の旅
CC0
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山手線の旅 - 起請
山手線 205系 田町駅 2002年2月26日
Photo by bkn / CC BY-SA

 しばらくの東京暮らし。なんだかんだと利用していた山手線。
 遊びに行ったり帰ってきたり。もたれかかったり座ったり。
 おつとめの足にしたことだってある。

 通勤型ロングシートだからのんびりくつろげないし、人の出入りも頻繁で気ぜわしいし、 乗っていてとても楽しい電車とまでは思わなかったけれど、でも、楽しいところに連れていってもらったことはたくさんあったかな。

 そんな山手線の駅ごと地ごと、神さまがたに手を奉ってみようと思う。

旅の概観
山手線 205系 田町駅 2002年2月26日
Photo by bkn / CC BY-SA

 純然たる「山手線(品川 - 田端)」に敬意を表し、旅のはじめは品川駅とする。
 そして外回りで渋谷・新宿・池袋から田端を経て東京駅に至り、 2020年開業予定の新駅を横目に見つつ品川に戻ってくるのだ。

 かしこきあたりをぐるりと囲む各駅停車全30駅全行程34.5kmの旅、東京二十三区中の九区をたどる旅。

いざさらば 道ひく神に 誓ひなむ 鉄路に響く 言つ霊
賜るならば 歌はなれ 叶はぬならば 歌はなるな

 駅(うまや)の神、地(つち)の神にも誓ひをたてた。さあ始めよう。

うぐいす
Original Photo by Alpsdake / CC BY-SA
        
みちしるべ
        
はじまりの駅 品川駅わたの原みさけし高輪鎮守
1889年(明治22年)頃の品川駅 PDM

 しながわ駅。東京都港区高輪三丁目。むかし海ぎわなりし駅。

高輪神社
 港区高輪。高輪口より北に0.75粁。主祭神は宇迦御魂(うがのみたま)神。旧社名は稲荷神社。
 本邦鉄道の嚆矢たる新橋-横浜開通当初、今の田町あたりから品川にかけては用地取得がうまくいかず、しかたないので海の上を走らせていた。
 歳月をかさねるうち海上軌道の周囲は埋め立てられ、いまや品川の、とりわけ高輪口に降り立ったところで潮の気配を感じることはないが、 人工地盤もビルもない、そんな時代には高輪神社からも蒼々と広がる海を眺めることができたのだろう。
 高輪鎮守は稲の神さま。塩気に反りは悪かろうが、それでもたまに往時を懐かしむことはあるだろうか。

高輪神社
        
一の駅 大崎駅大崎鎮守 居木神社
大崎駅西口
Photo by Nyao148 / CC BY-SA

 おおさき駅。東京都品川区大崎一丁目。前駅品川より2.0粁。いつのまにか南北うらがえる駅。

居木(いるぎ)神社
 品川区大崎。西口より0.3粁。主祭神日本武尊(やまとたけるのみこと)。
 元は東方0.8粁の居木橋付近に鎮座していたが、目黒川の水難を避けて現在地に遷されたと云う。
 旧社地には「ゆるぎの松」なる大きな松があって、そもそもそれが居木の名の由来と云うのだけれど、 遷座後にこの松がどうなったのか、由緒書きは伝えていない。

居木神社 拝殿
        
二の駅 五反田駅ねむの花におう庭

 ごたんだ駅。東京都品川区東五反田一丁目。前駅大崎より0.9粁。起点品川ゆり2.9粁。

ねむの木の庭
 品川区東五反田。東口より0.6粁。皇后美智子さまのご生家跡地に設けられた区立公園。
 大宰帥(だざいのそち)を務めた大伴旅人卿は僕にとって歌の大兄で、大兄であるからに大いになれなれしくなついているのだけれど、 いずれは黄泉の国で生前の非礼をわび、申し開きをすることになるかもしれない。
 相手は征隼人持節大将軍(せいはやと じせつたいしょうぐん)にも任じられたますらおなので、きっと僕は頭を垂れ涙ながらに情けを乞うことになるだろう。
 だけどただひとつ、大納言殿には卑小なわが身にも、その青年期から壮年期にひざ折る皇孫(すめみま)をいただけたことだけは、胸をはって伝えたいと思う。
 もちろん、次の御世のことも。

        
三の駅 目黒駅権之助の坂
目黒駅 正面口

 めぐろ駅。東京都品川区上大崎二丁目。前駅五反田より1.2粁。起点品川ゆり4.1粁。

権之助坂
 正面口を出てすぐ左(西方)。目黒通りの下り坂。品川区上大崎と目黒区目黒、下目黒が接するあたり。
 南に並行する行人坂の勾配が急であったため元禄期に新たに開かれた。
 名の由来である菅沼権之助が果たした役割には複数の説があり、恩人義人とも悪党とも云われる。

権之助坂
Photo by Harani0403 / CC BY-SA
        
四の駅 恵比寿駅町の烏帽子親
恵比寿駅 西口
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 えびす駅。東京都渋谷区恵比寿南。前駅目黒より1.5粁。起点品川ゆり5.6粁。

恵比寿のおこり
 もともと下渋谷村および三田村と呼ばれていたこのあたりに、明治の中ごろ日本麦酒醸造会社が工場をたてて、生産販売したものを「ゑびすビール」と称した。
 まもなくビール運搬のために設けられた貨物駅はこの商品名にあやかり「恵比寿停留所」と命名され、のちに開業した旅客駅も「恵比寿駅」になった。
 駅の名が恵比寿になったもので周辺地域も次第に恵比寿と呼ばれるようになり、とうとう正式な地名になってしまったのだと云う。

恵比寿神社の不思議
 えびすという神さまは「蛭子(ひるこ)神」もしくは「事代主(ことしろぬし)神」と同一視されることが多いので、 各地のほとんどの「えびす神社」では「蛭子」「事代主」のいずれかが祭神として祀られている。
 蛭子神を祭神としたえびす神社の総本社は兵庫県西宮市の西宮神社。一方の事代主神のえびす総本社は島根県松江市美保神社
 さてここで、もともとは恵比寿の駅前にあったと云う渋谷区の恵比寿神社
 「ゑびすビール」からはじまった縁でえびす神を祀っているのだけれど、なぜか、 蛭子系の西宮神社から勧請したにもかかわらず事代主を祭神としている。
 事代主さまにとくだんの不満があるわけではないけれど、どうして蛭子さまではないのか、不思議な話ではある。

恵比寿駅西口のえびす像
        
五の駅 渋谷駅千代籠められて待ちぼうけ
渋谷駅 ハチ公口

 しぶや駅。東京都渋谷区道玄坂一丁目。前駅恵比寿より1.6粁。起点品川ゆり7.2粁。

忠犬ハチ公
 ハチ公口すぐ。渋谷ハチ公前と云えば全国的に知られた待ち合わせの定番。
 友だちだったり恋人だったり、待ったり待たせたり怒ったり謝ったりしても、みんなはやがて連れだってどこかへ去っていく。
 だけどかわいそうなハチ公の待ち人は、もうずっと帰ってこない。

        
六の駅 原宿駅明治のきみと大晦日
原宿駅 表参道口
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 はらじゅく駅。東京都渋谷区神宮前一丁目。前駅渋谷より1.2粁。起点品川ゆり8.4粁。

明治神宮
 表参道口より南方の神宮橋渡ってすぐ。社名の通り明治天皇昭憲皇太后が祀られている。
 三が日の参拝者は毎年300万人以上で、全国一の数だと云う。

        
七の駅 代々木駅公園も八幡もあるけれど
代々木駅 西口
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 よよぎ駅。東京都渋谷区代々木一丁目。前駅原宿より1.5粁。起点品川ゆり9.9粁。

予備校の街
 地方産の僕にとって、代々木なる地名の初見は予備校の名に組み込まれてのものだった。
 代ゼミ駿台河合塾、いずれも縁はなかったけど、田舎の書店の参考書のコーナーでよく目にした名前だ。
 この頃は子供が減ったのかあるいは大学が増えすぎたのか、予備校経営には厳しい時代だと聞く。
 だけどいくら数を減らしても、希望する大学に進むためよなべを重ねる学生さんが絶えることはないだろう。
 人生の何もかもがそれで決まるとは思わないけど、せっかくなので良い結果を引いておけばいいよ。

代々木ゼミナール本部校
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八の駅 新宿駅眠らぬ街の鎮守さま
新宿駅 東口
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 しんじゅく駅。東京都新宿区新宿三丁目。前駅代々木より0.7粁。起点品川ゆり10.6粁。

花園神社
 新宿区新宿5丁目。東口から0.7粁。祭神は倉稲魂(うかのみたま)神 など。境内摂社の芸能浅間神社は歌芸演劇関係者の奉納がさかんと云う。
 毎年11月の酉の日に催される酉の市は関東三大のひとつに数えられ、多くの人出を集めている。

花園神社 酉の市
Photo by Kenta Hayashi / CC BY
花園神社 酉の市
Photo by Kenta Hayashi / CC BY
        
九の駅 新大久保駅いかなほまれのまされやも
新大久保駅
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 しんおおくぼ駅。東京都新宿区百人町一丁目。前駅新宿より1.3粁。起点品川ゆり11.9粁。

2001年(平成13年)1月26日金曜日 19時14分ごろ
 新年の祝賀気分も抜けきった週末の宵の口、泥酔した男性がホームから線路に転落。
 その危急の況に、彼とは縁もゆかりも無い二人の男性が線路に飛び降りて救助をこころみたが、まもなく入線してきた電車にはねられ、三人とも死亡した。
 見ず知らずの他人の危機に命を投げ出した二人の、うちひとりは日本人のカメラマンで、もうひとりは韓国人の留学生だった。
 このいたましい事故は社会に衝撃を与え、二人の勇気ある行為を讃じ、遺族の哀しみをいたわる言葉が世に奔った。
 しかしながら、いかな言葉も愛しい息子の「ただいま」のひとことに叶うべくもなく、日本人カメラマンの母親は数年ののちに孤独死されたと聞く。
 せめて常世の涯てであいうつくしまれていると願うばかりである。

列車非常停止ボタン
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新大久保駅ホーム 2016年
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十の駅 高田馬場駅ふたり左衛門あいこときれぬ
高田馬場駅 早稲田口
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 たかだのばば駅。東京都新宿区高田馬場一丁目。前駅新大久保より1.4粁。起点品川ゆり13.3粁。

高田馬場の決闘
 時に元禄、伊予西条藩士の村上庄左衛門は同輩の菅野六郎左衛門と口論になり、あげく高田馬場で決闘をすることとなった。
 庄左衛門は万全を期し二人の弟を伴って決闘に赴いたが、菅野六郎左衛門も剣客の助っ人を連れていた。
 いざ刃を交えるに、庄左衛門は六郎左衛門を討ったものの彼の連れていた剣客中山安兵衛(後の堀部安兵衛)に弟ともども切り伏せられ、 決闘は相討ちに終わった。

        
十一の駅 目白駅安兵衛偽伝

 めじろ駅。東京都豊島区目白三丁目。前駅高田馬場より0.9粁。起点品川ゆり14.2粁。

学習院大学 血洗いの池
 駅至近の学習院大学構内。高田馬場の決闘で村上庄左衛門ら三名を切り伏せた中山安兵衛が、この池で血に塗れた刀を洗ったと伝わる。
 ――のだが、それは大正の頃に学習院の学生がこしらえた逸話で、つまりは嘘伝である。
 この伝承、奇妙なことに事実ではないとネタが割れていながらも悪びれることなく語り継がれているようで、下手をすると遠い未来、 創作のくだりが省かれて史実のごとくになりかわるかもしれない。

学習院大学 血洗いの池
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十二の駅 池袋駅巣鴨プリズンありき
池袋駅 東口
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 いけぶくろ駅。東京都豊島区南池袋一丁目。前駅目白より1.2粁。起点品川ゆり15.4粁。

サンシャインシティ
 東口35番口より出てサンシャイン60通りを進む。駅より約0.5粁。
 現サンシャインシティの一帯は戦前には東京拘置所と称する刑務所だった。
 それが敗戦後GHQに接収され、戦争犯罪者を収容する「巣鴨プリズン」に名を変えた。
 巣鴨プリズンではA級戦犯7名、BC級戦犯52名(53名とも)の処刑が執り行われた。
 日本への移管、閉鎖解体を経て跡地にサンシャインシティが開業したのは1978年(昭和53年)のこと。
 地上200mを越える高殿は「サンシャイン60」と命ぜられた。

サンシャイン60 展望台からの眺望
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十三の駅 大塚駅武州大塚村
大塚駅 南口
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 おおつか駅。東京都豊島区南大塚三丁目。前駅池袋より1.8粁。起点品川ゆり17.2粁。

犬塚信乃のふるさと
 南口より約2粁、三井住友銀行茗荷谷研修所のあたりに「大塚」の由来たる古墳があったと云う。
 そして大塚といえば、何よりも犬士犬塚信乃の故郷である。
 八犬伝の時代は遠い昔ではあるけれど、ふとあたりを見やれば女装の童を背にのせた大きな犬が駆けてゆく――。 大塚はそんな街であってほしいと思う。

犬塚信乃戍孝
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十四の駅 巣鴨臼歯の原宿
巣鴨駅 正面口前
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 すがも駅。東京都豊島区巣鴨一丁目。前駅大塚より1.1粁。起点品川ゆり18.3粁。

巣鴨地蔵通り商店街
 正面口より0.25粁。とげぬき地蔵高岩寺までは0.45粁。
 「おばあちゃんの原宿」の求心力のひとつがとげぬき地蔵
 お地蔵さまが描かれた小さな和紙のお札を飲むと病気平癒のご利益があると云う。

        
十五の駅 駒込駅側用人の夢のあと
駒込駅 北口
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 こまごめ駅。東京都豊島区駒込二丁目。前駅巣鴨より0.7粁。起点品川ゆり19.0粁。

六義園
 南口より0.17粁。五代将軍徳川綱吉側用人が造営した大名庭園
 「六義(りくぎ)」とは和歌の六つの基調を表す語で、古今集にまなんだ側用人がその精神を庭園に顕したゆえの名と聞けば、 わからないなりにもなんとなくめでたい。
 ただこの側用人、時代劇では性悪な人物に設定されることが多く、実像を知る由もないだけに気の毒なことではある。
 名前はたしか柳沢、柳沢――なんと云っただろうか。

        
十六の駅 田端駅河童も鼻もあれし地
田端駅 北口
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 たばた駅。東京都北区東田端一丁目。前駅駒込より1.6粁。起点品川ゆり20.6粁。

田端文士村
 北口より西方に田端文士村記念館、駅前住宅街に芥川龍之介旧居跡など。
 昔はインターネットがなかったので、寄り集まってコミュニティを設けるにはリアルな場所が必要だった。
 明治大正から昭和のはじめと云えば、今ほど交通手段も充実してないし、電話だって普及していない。
 気のあうどちなら離れ離れに暮らすより近場にまとまったほうが何かと都合がよい。
 そんなわけでここ田端に芥川龍之介室生犀星といった文筆家たちがいざないいざなわれ居をならべ、言葉の饗を競うこととなった。
 祝い多かりし文士たちの宴は干支ひとまわりほど続いたのち、芥川自死の衝撃によってにわかに禍めき、 犀星を去らしめて輝き薄く褪せていったのだと云う。

田端文士村記念館
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十七の駅 西日暮里駅初冠かくして名にも負はざらし
西日暮里駅
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 にしにっぽり駅。東京都荒川区西日暮里五丁目。前駅田端より0.8粁。起点品川ゆり21.4粁。

日暮里富士見坂
 出口より西方にガードくぐり西日暮里公園脇の道に入り道なりに0.37粁。
 富士見の名を持つ坂はおおくあって、おそらくかつては名の通り富士の峰を見せていたのだろうけど、 今なお帳を下げぬものは少ないと聞く。
 ここ西日暮里の富士見坂は近年まで浅間の神の山容をしららかに映していたというが、今はもはや旧観を偲ぶばかりとなってしまった。

日暮里富士見坂 2012年
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十八の駅 日暮里駅時雨もののふ日暮れの里に
日暮里駅 南口
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 にっぽり駅。東京都荒川区西日暮里二丁目。前駅西日暮里より0.5粁。起点品川ゆり21.9粁。

太田道灌騎馬像
 東口駅前広場。江戸築城の祖のゆえか、山手線近辺には道灌の影がちらほら。旧都庁、今の東京国際フォーラムにもひとりいる。
 あとは影こそ見えね、西日暮里には道灌山があるし、高田馬場のご近所は山吹の里伝説に名乗りを上げている。
 この日暮里の像にも「このあたりでよく鷹狩りをした」という由緒がそなわっているそうな。
 うそかまことかは道灌のみそ知る、にしても、造形の男前ぶりに悪い気はしないのではないかしら。

七重八重 花はさけども 山吹の 実の一つだに なきぞかなしき
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十九の駅 鶯谷江戸前の鶯まねぶ京なまり
鶯谷駅 北口
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 うぐいすだに駅。東京都台東区根岸一丁目。前駅日暮里より1.1粁。起点品川ゆり23.0粁。

根岸子規庵
 北口より0.35粁。台東区根岸2丁目。正岡子規がこの地に移り住んだのは1894年(明治27年)。
 1902年(明治35年)に子規が隠れて、1945年(昭和20年)には住居も焼けて、現在の家はそれから復興したものだと云う。
 かつての佇まいをどれほど遺しているのか知る由もないが、どうであれ子規を慕う人には聖地のようなものなのだろう。

根岸子規庵
        
二十の駅 上野駅まなかいをとざして耳朶の里帰り
上野駅
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 うえの駅。東京都台東区上野七丁目。前駅鶯谷より1.1粁。起点品川ゆり24.1粁。金の卵あまた揚がりし駅。

上野駅13-17番線 頭端式ホーム
 駅構内。櫛の歯様のホームは始発のしるべであり、すなわち終着のあかしである。
 「上野発の夜行列車」の哀感は昭和平成を経た新たな御世にも通じるのだろうか。

啄木歌碑
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二十一の駅 御徒町駅アメ横を知らず閉じゆく暮れはなし
御徒町駅 北口
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 おかちまち駅。東京都台東区上野五丁目。前駅上野より0.6粁。起点品川ゆり24.7粁。

アメヤ横丁
 北口出てすぐ山手線上野方面に並行。甘いあまい「飴屋」横丁説と米進駐軍放出品の「アメ屋」横丁説がある。
 御徒町側から「アメ横」のゲートをくぐって50mも歩けば摩利支天徳大寺。
 店々の覗き歩きで見逃しがちでも、時に適えば音が知らせてくれるだろう。

アメヤ横丁 - 摩利支天徳大寺
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二十二の駅 秋葉原駅電気街 オタク街
秋葉原駅 電気街口
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 あきはばら駅。東京都千代田区外神田一丁目。前駅御徒町より1.0粁。起点品川ゆり25.7粁。

秋葉原 中央通り
 電気街口出てすぐ。とんとごぶさたで近年のことは知らないけれど、かつて電気街の顔が主だったころ、 休日に訪ねる秋葉原歩行者天国はなんとはなしに楽しかった。
 特に目的がなくても、あちこちの店で奇妙なものや何の役に立つのかわからないものを冷やかして、 賑やかな街の一部になりすますのはなかなかに面白かった。
 日が落ちて暗くなって、万世橋のあたり、肉の万世のビルが美味そうにたっていたのだけれど、 本当に美味いかどうかはついぞ確かめる機会がなく、そのことを残念に思う。

        
二十三の駅 神田駅江戸の鎮守は川向こう
神田駅 西口
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 かんだ駅。東京都千代田区鍛冶町二丁目。前駅秋葉原より0.7粁。起点品川ゆり26.4粁。

将門塚
 西口もしくは南口より南西に1粁。千代田区大手町1丁目。京の都に晒された平将門の首が飛んできたと伝わる、近世に稀な生ける祟り。
 神祇の利益に無縁な吾が身なら祟りだって無効とは思うけれど、念のため神田神社の一の柱に取り成しをお願いしておこうかしら。

将門塚
Photo by Kakidai / CC BY-SA
        
二十四の駅 東京駅江戸のはじめの汀あと
東京駅
Photo by bryan... / CC BY-SA

 とうきょう駅。東京都千代田区丸の内一丁目。前駅神田より1.3粁。起点品川ゆり27.7粁。

日比谷入江
 埋め立てで海岸線は遠くなったが、もともと東京駅のあたりは浅い入り江、つまりは海だった。
 道灌も遠い昔になった1600年代、江戸城に迫る海岸線を埋め立てたのは徳川家康だが、何もかもを埋め尽くしたわけではないらしく、 東京駅中央口より西進0.2粁、日比谷通りを左に折れて右手に見える馬場先濠、日比谷濠は入り江を埋めずに残した名残と云う。

日比谷濠
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二十五の駅 有楽町駅Meet Me in Yurakucho
有楽町駅 中央西口

 ゆうらくちょう駅。東京都千代田区有楽町二丁目。前駅東京より0.8粁。起点品川ゆり28.5粁。かつて都庁の最寄駅。

読売会館
 中央西口または国際フォーラム口出てすぐ。かつて有楽町そごうが入居していた。
 1957年(昭和32年)、有楽町そごうは開店にむけてメディアとのタイアップキャンペーンを行い、それが功を奏し初日には30万の人出を集めた。
 同年7月に発売された楽曲「有楽町で逢いましょう」もその一環で、半年間で約50万枚を売り上げたあげく、 有楽町そごうがなくなった現在においてもスタンダードナンバーとして人気を誇っている。

読売会館
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二十六の駅 新橋駅姫路おぼこのいななくに
SL広場のC11 292号機

 しんばし駅。東京都港区新橋二丁目。前駅有楽町より1.1粁。起点品川ゆり29.6粁。汽笛一声日本鉄道嚆矢の駅。

SL広場
 日比谷口の駅前広場。C11型蒸気機関車の292号機が静態保存されている。
 C11 292号機は終戦の半年前、昭和20年2月の生まれで、現役引退まで27年間姫路地区を駆けつづけた。
 日本の鉄道100周年の年(昭和47年)、記念車両を求めて港区の放った白羽の矢がなぜかこの292号機に立ってしまい、 以来彼女はここに鎮座している。

新橋駅 日比谷口 SL広場
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二十七の駅 浜松町駅大君のめしける海や
浜松町駅 北口
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 はままつちょう駅。東京都港区海岸一丁目。前駅新橋より1.2粁。起点品川ゆり30.8粁。モノレールにも乗れる駅。

旧芝離宮恩賜庭園
 北口より東にガードくぐってすぐ。元は老中大久保忠朝屋敷内の庭園。
 明治の頃には大君が行幸して九尺台(九盈台)から眼下の海を眺められたと云うが、今はビルと空を映すばかり。

        
二十八の駅 田町駅噺家のおとがいに見る芝の浜
田町駅 三田口
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 たまち駅。東京都港区芝五丁目。前駅浜松町より1.5粁。起点品川ゆり32.3粁。

芝公園
 三田口より北に東に南に歩いて0.4粁。
 このあたりは昭和中期まで江戸前の魚介が揚がる雑魚場(ざこば)だった。
 また、賭場では「隼の七」で通った三代目桂三木助が得意とした古典落語「芝浜」の舞台でもある。

芝公園
Photo by koji_h / CC BY
        
二十九の駅 高輪ゲートウェイ東京五輪の還り年に
建設中の高輪ゲートウェイ駅 2019年1月25日

 たかなわげーとうぇい駅。東京都港区港南二丁目。2020年度開業予定。
 駅名後半に不服を唱える向きもいらっしゃるもよう。確かに既存の山手線駅名には見られない語感である。
 十年後、二十年後には馴染んでいるやらいないやら。

2020年 東京オリンピック
 山手線の新駅は東京オリンピックの年に開業するということなのだが、 だからといって競技場の最寄りだとか、関係施設の至近だとか、そんな五輪開催の利便に機能するわけではないらしい。
 羽田空港だの中央リニアだので品川一帯の要衝の度合いはいよよ増しゆくらしく、新駅および周辺の開発もその一環。
 オリンピックの年に営業開始するのはよい潮といった程度なのだろう。

1964年 東京オリンピック開会式
        
おわりの駅 品川駅御殿の山に花咲くや
品川駅 高輪口
Photo by Aimaimyi / CC BY-SA

 しながわ駅。東京都港区高輪三丁目。前駅田町より2.2粁。起点品川ゆり34.5粁。

御殿山
 品川駅南方、品川区北品川あたりの高台。太田道灌の御殿山城から江戸期には徳川将軍の休息所となる。桜の名所として知られたと云う。
 幕末にはお台場建設のため土砂を採取され一部は窪地となった。
 その後も英国公使館焼き討ち事件が起こったり、戦後には東京通信工業株式会社(のちのSONY)が興ったり。
 今は閑静な高級住宅地として、御殿山小学校の学童を見守りつつおだやかに年を重ねている。

御殿山花見
Picture by 歌川広重 / PDM
        
山手線の旅 終わりふりだしに もどる
明治時代初期の品川駅 PDM
はじめはとじめ おわりはさわり
ぐるりめぐらす山手線は どこまでいってもどこにもいけず
大井の宿に 泣き寝入り
東京タワーと品川駅と田町車両センター

高輪大木戸と伊能忠敬
 高輪大木戸は高輪口より田町側に1.2粁。かつての江戸の出入り口の遺構。
 日本橋を出立した東海道五十三次の旅はこの木戸を抜けていよいよ本番となる。
 江戸後期に日本全土の精密な実測地図をなした伊能忠敬は測量行の際、この高輪大木戸を基点に置いたと云う。
 旅のおわりの旅はじめ。旅のはじめの高輪大木戸に縁ふかき忠敬翁を招いて旅のおわりの贄手を捧げたい。

大日本沿海輿地全図 (大図) レプリカの展示
平成31年(2019年)4月16日